何よりも‘速い’音楽とそのポリティックス
気鋭の音楽批評家が「アメリカス」の音楽と文化を論じた書。 いうまでもなく、アメリカスとは南北アメリカの総称である。 ここ10数年内に書かれた比較的長めの論考を中心に、 インタヴュー記事やCDレヴュー、ライナーノートを資料編的に配置。 全5部からなり、主要参考文献、主要人名リストがつく。さまざまな形式や文体によって織りなされた作品である。 そこには、「現場主義」への信頼と不振とのあいだでつねに揺れる 著者の在りかたが投影されているのはいうまでもないだろう。 音楽は地域的拡がりと同時に、他芸術への相互浸透、 宗教・政治・社会・経済などとの錯綜したつながりがあるからだ。 文脈上、いくつかの内容的重複があるのが玉に瑕だが、 著者が述べるように「とりあえずの結節点」で粗さも愛嬌か。 すでに新たな段階にはいっているジャンルやテーマもあり、 音楽はつねになによりも「速い」。 本書によって、米国最大のマイノリティとなったラティーノ/ナたちが、 逆境を糧に生みだした豊穣なる音楽がもつ関係性が一定明らかとなる。 その音楽が米国はおろか世界中で「アメリカン・ポップス」として流布する。 ラテン・ミュージックの拡散とラテン性の希薄化が複雑に同時進行している。 本国では年配者が好むボサノヴァを嬉々として流す洒落たカフェ店主や、 サルサバーにたむろするおよそ排他的で家元制的なダンサーらに、 本書を手にとって欲しいところだ。さらに奥へ、である。 著者の、ラテン・ミュージックへの溢れでるような熱情を、 いまこそ確かめるべし。
音楽之友社
全‐世界音楽論 違和感受装置―クロニクル1996-2003 知ってるようで知らない ラテン音楽おもしろ雑学事典 高場将美 著 シンコペーション ラティーノ/カリビアンの文化実践 (Flash! Forward) 米国ラテン音楽ディスク・ガイド50’s-80’s LATIN DANCE MANIA
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